一昨日お付き合いしたがん友が今、○大病院の外来待合室で、自分の診察の番を待っている。彼女は、肝臓にがんが転移しており、その転移巣が増大し、命を脅かす状態になっている。
いつも、彼女のセカンド・オピニオンに私は付き添い、またその予約を取るためにお膳立てをしていた。しかし、今待合室で待っている○大病院は、私が一度も行ったことがなく勝手が分らない。
それでも、彼女が予約を取れなかった場合は、以前お名刺を頂き、2〜3度メールを交信したことのある○大の医師に頼んで、予約を取って頂こうと腹積もりをしていた。
そう。駄目もと精神で様々なものに体当たりしている私の常套手段だ。何様、人ひとりの命がかかっているのだから・・・。ほんのかすかな接点を利用しない法はない。
彼女は、通常の予約を取る為に予約センターに電話をした。当然、一番早くて2〜3ヶ月先である。彼女は、『私は7月24日に上京する用事があります。私には、もう時間がないのです。どんどん腫瘍が大きくなっています。何としても、7月23日に診ていただきたいのです。』と必死で訴えたという。
彼女の切実さが電話の相手に伝わり、何と、『分りました。それでは、私は、その日、一番に並びます。そして貴方のために予約をとって差し上げます。』と、その職員の方が申し出て下さったという。
地方の彼女から、そういう訳で7月23日、○大付属病院に診察できることを連絡してきた。私は、もう飛び上がらんばかりに嬉しかった。何故なら、彼女は、私の力を借りることなく自力で予約を勝ち取ったのだから・・・。
最もその病院は、私があるがん友から得た情報を提供していたのである。自己責任という観点から、このように自分が選択し、自分が決断し、自分が実行することが一番理想とするスタイルである。私はただ、『でかした。でかした。』と、彼女を褒めた。
そして、彼女は、7月23日診察を受けた。しかし、腫瘍が大きいことと、数も多いということから、その願っている治療は難しく、リスクが高いのでこの治療の対象ではないことを非情にも告げられた。
しかし、彼女は、それでもひるまなかった、『私の息子は医者の卵です。どうか、今後の彼の働きに大きな学びと成ることと思います。リスクを覚悟でお願いしたい。』と、懇願した。
医師は、医師仲間に弱い。その医師は、態度を一変し、『それでは、部長の先生に相談してみます。その結果を7月26日(木)にお知らせします。但し、患者が全国から来ているので、診察は、深夜になる可能性があります。よろしいですか・・。』という信じられない回答を得た。
そして、今、その彼女は、○大病院の待合室にいる。19時の時点で、まだ彼女の前に6人おり、とりあえず、2時間待ち・・・と言われたと言う。そして恐ろしいことに、彼女の後にまだ何人か待っている人がいるというのだ。
深夜の診察とは脅しでも冗談でもない。本当にそこの診察室は今この時間も煌々と灯りがついているのだ。
その後の連絡が彼女からあることだろう。命は生きようとしている。その叫びに静かに耳を傾ける時、マニュアル通りの会話をそうやすやすと受け入れる訳にはいかないのだ。
決してあきらめないで、相手の胸倉を掴み、揺り動かす。必死な思いをぶつける時、人の心にその一生懸命さは届く。どれだけ必死になれるかだ。
今回のことはその一例である。これは、作り話でも、脚色でもない。まさにリアルタイムの今現在この時間の進行形の話しなのだ。
22時40分、たった今、診察が終わったとメールがあった。○大での治療は、134人待機者がおり、彼女の腫瘍のスピードが速いことから、早い治療がよいことを考え、
昨年までその病院にいらした医師が、移動されている病院で早速治療を開始されるという。兎に角ほっとしており、治療が奏効することを切に願っている。
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