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2019_04
21
(Sun)23:41

命のバトンゾーン!

 今、命のバトンゾーンの中にいる会員さんがおられる。

穏やかに緩やかに時が流れ、夫婦は、濃密な二人だけの時間を紡いでいる。ご主人のペースで目覚めたり眠ったり。

緩和ケア病棟は、陽だまりの中にいるように、スタッフも緩和医療も温かい。

夫が、アイスを食べたいとリクエスト。妻は売店に走る。半分位食べたところで、『おさ湯が欲しい。』という夫。口の中が冷たくなったもようである。看護師さんや妻から思わず笑いがおこる。

『どなたかにお会いした方などおられませんか?』と、主治医が尋ねると、『友達の管理は、私がきちんとしていますので、大丈夫です。』とにこりと返事をする夫。

妻が咳をする。夫は、腕を自分の口にあてる。妻がどうしたのと聞くと、『あなたの風邪が移ると困るから。』周りはちょっと、唖然とする。夫は、生への執着はもうない。死への恐怖もない。いつしか、それが脳裏から消えた。

生きるための抵抗もストレスもない。欲しいものは、妻が全部叶えてくれる。妻の深くて温かい懐の中に、どっぷりと浸かって安らいでいる赤子のよう。

痛みもセキュリティーも守られた中で、二人は、ゆっくりゆっくり、走っている。夫の命のバトンは、奇跡的にまだ夫が握っている。

妻の走りが限界が来た時、きっと、夫の命の火は消え入る。そして、命のバトンは、その瞬間に、妻に手渡される。引き継がれる。

命のバトンゾーンがみなが納得できるような長さであるように、上手く、命のバトンタッチがなされるように、

願わくば、周りの者に、二人だけの時間が邪魔されることがないように、私はそう願っている。

妻からは、毎日line mailが届く。様々に舞い込む複雑な問題を、一つひとつご相談される。私の言葉はただ一つ、彼のエンディングノートに従うこと。

妻の考えではなく、夫がそう望んでいるから。それが基であり、その地軸が全てであることを、いつも、確認をすること。

ぶれないこと。はずれないこと。忘れないこと。彼の意志を尊重すること。彼の人生ですもの。他の考えがある人は、自分の時にそうすればいいだけ。

夫の人生が他人の人生にすり替わってはいけない。

彼女にはいつもこういう。今は、金の砂時計ね。尊く輝かしい。金砂が落ち切ったら、また、引っくり返せばいいのよ。

きっと、彼女は、今日も彼の足や手に触れながら、横たわる夫に優しく甘く囁いていることだろう。