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(Mon)22:10

痛みの伝え方:埼玉県立がんセンター緩和ケア科 余宮きのみ医師取材記事掲載される!

下記記事に出てくるアカシジア(制吐剤による副作用)で苦しんだ会員さんをお二人私は知っている。この症状は、本人いわく、がんより怖い・・・と言っていた。

注:
制吐剤は、抗がん剤の時だけでなく、オピオイド(医療用麻薬)の時にも制吐剤を概ね処方される。

じっとしていられない。いつもグルグル回って(歩いて)いないと落ち着かない。ソワソワ感やムズムズ感で苦しいと我々に訴えておられた。

しかし、このお二人(それぞれ)は、医療者により適切に対処されることなく、理解されることなく、鎮静されることなく最期を迎えられた。私はとても悔しい。会員さんのことであっても、苦々しい思い出である。

だから、このような発信(余宮きのみ先生のような)に対して我々は、その時になってから勉強するのではなく、(それでは間に合わない)今、学べる時にきちんと、予備知識を持っておくことは、大変必要だと思っている。いざという時のために、慌てふためかないために。

がん末期の症状に精通していない医師であった場合などのことを考え、患者や家族もその備え(知識)をしておかなければならないと私は思っている。

明日は、勝俣範之医師の取材記事を紹介したいと思う。

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【特集記事】がんの痛みを上手に伝えるために

公開日:2015年8月31日
dr_yomiyakiyomi
余宮 きのみ 先生
埼玉県立がんセンター緩和ケア科 科長 

がんの痛み、がんと関係ない痛みなど複数の痛みが混在

 8月の暑い日、院内の往診依頼を受けて、肺がんの痛みの治療で患者Aさんを診察しました。Aさんは心窩部のあたりの痛みのほか、両手のしびれを訴えました。

心窩部の痛みは、肺がんが縦隔リンパ節に転移し、胸椎1番から4番にかけて浸潤しているために起こっていることがわかっていました。

しかし、両手のしびれについては、詳しく話を聞いていくと、その半年前に整形外科で脊柱管狭窄症の診断を受けていたことがわかりました。Aさんは心窩部の痛みも手のしびれも肺がんの脊椎転移によるものと思い込んでいたようです。

患者Bさんは乳がんが骨転移して腰のあたりに激しい痛みを訴え、放射線治療のほか、オピオイドのオキシコドンによる治療を受けていました。しかし、痛みが改善しなかったため、オキシコドンが増量されると、眠気、吐き気が強く現れるようになったといいます。

Bさんを診察して詳しく話を聞いたところ、激しく痛むのは身体を動かす時だけで、安静時には痛みはないことがわかりました。

そこで、オキシコドンの投与量を調整して少量で痛みを抑えることができました。 痛みは、体性痛、内臓痛、神経障害性疼痛の3種類に分けられます。

がん患者さんの痛みは、がん自体による痛み、がん治療による痛み、がんやがん治療とは直接関係ない痛みの3つに大きく分けられます。

個々の患者さんの痛みを正しく評価し、必要な鎮痛薬を適切に処方するためには、患者さんの情報が拠り所になります。患者さんが痛みを上手に伝えれば、それだけ痛みの正体をより早く突き止め、適切な治療が可能になります。

私たち医師が患者さんの痛みを評価するうえで知りたいことは次の8項目です。1つでも欠けると、的確な評価がしにくくなります。


□痛みの部位(どこが痛いか)
□痛みの始まり(いつから痛いか)
□痛みの性質(どのような感じの痛みか)
□痛みのパターン(痛みが起こる頻度、持続する痛みか、突出する痛みか、時間経過による痛みの変化など)
□痛みの強さ(ペインスケールの利用)
□痛みに影響する因子(増強因子と緩和因子、痛みと関連する他の症状)
□今までの治療(これまでの治療法とその効果)
□生活への影響(身体機能、社会機能、日常生活、精神状態への影響)

  がん患者さんの痛みと一口に言っても、1種類の痛みが単独で存在することはまれで、複数の痛みが混在していることが多く、中には非がん性の痛みも少なくありません。

痛む場所、痛み始めた時期とともに、何かのきっかけで痛くなったのであれば、そのことも伝えてください。

痛みのパターンには持続痛と突出痛があります。持続痛は安静時痛ともいえます。突出痛は、一時的に起こる痛みです。

持続痛と突出痛は治療法が異なってきます。体を動かす時に起こる痛みであれば、痛みが出ないような動作をしたり、環境を整えたりすることで痛みを回避することができます。

痛みの性質はいろいろで、感じ方も個々の患者さんで違います。どのような感じの痛みかは、表を参考にしてください(痛みの性質と痛みの種類は必ずしも一致するものではありませんが、目安になります)。

痛みを表す言葉
痛みを表す言葉
余宮きのみ著:ここが知りたかった緩和ケアp62,2011 南江堂より引用改変

痛みの強さを評価するスケールは何種類かあります。なかでも、NRS(Numerical Rating Scale)は痛みの強さを0(痛みがない状態)~10(これ以上ない最悪の痛み)の11段階で示すことができ、特別な道具がなくても、電話ででも医師に伝えることができる点が便利です。

NRSで答えられない場合は、表情別のイラストで痛みの程度を示すフェーススケールなどを使うこともあります。

痛みの治療では医療用麻薬による依存症の心配はない

 1987年に世界保健機関(WHO)から『がんの痛みからの解放』が発行されました。医療用麻薬の上手な使い方が提唱され、多くのがん患者さんが痛みから救われるようになってきました。

しかしながら、以来28年経過した現在も、患者さんばかりでなく、医療者のなかにも医療用麻薬に対する先入観や偏見があり、オピオイドの使用や増量を躊躇するケースがあるようです。

海外の研究報告から、患者さんが痛みを訴えることや疼痛治療を受けることに二の足を踏む理由として、「痛みは耐えるべきという信念」「良い患者は痛みを訴えないものだという信念」「副作用の心配、精神依存・中毒・耐性に対する恐怖」「錠剤や注射が増えることの負担」などが浮かび上がってきました。

日本でもがん治療医295人を対象に行ったインターネット調査で、80%の医師が患者(家族)からオピオイドの精神依存について質問を受けたことがあると答えています。

日常診療でも、「この程度の痛みで薬を使っていたら、鎮痛薬がだんだん効かなくなる」と思い込んで痛みを我慢している患者さんは少なくありません。

がんの痛みを我慢していると、眠れなくなったり、不安・抑うつ状態を招いたりして痛みを感じる神経が過敏になり、脳は痛みを強く感じるようになります。

また、食欲が落ちて、体力も低下すると、がんの治療が十分に受けられなくなります。このように「痛みの悪循環」に陥ると、鎮痛薬の効き目が落ちて、痛みは増強し、より多くの鎮痛薬が必要になります。

火事に例えると、ボヤ程度ならバケツの水や消火器(一般の医療機関)で対応できますが、火事が大きくなれば消防車(専門医)が必要になります。痛みが出たら軽度の段階から、十分に鎮痛薬を使ってコントロールすることが大切です。

適切な疼痛治療を受けて痛みが和らげば安心して熟睡できるようになります。そうすると、痛みに対するセルフコントロールが可能になり、さらに、食欲、体力が回復すると必要ながん治療も受けることができるようになります。

また、医療用麻薬によって依存症になるという誤解がいまだにありますが、痛みの治療で医療用麻薬を使用しても依存症になったり、寿命が短くなったりすることはありません。

痛みの原因がなくなれば鎮痛薬を中止することもできます。必要に応じて薬を増量すれば痛みは緩和されます。

がんの痛みは終末期になるほど発生頻度は高くなりますが、初期の段階から出ることもあります。これはがんの部位と密接な関係があります。

神経が集まっている部位であれば小さながんでも激しい痛みを起こすことがあります。逆に、神経があまり集まってない部位では大きながんでも痛みは起きにくいのです。がんの大きさと痛みは関係ありません。

制吐剤の服用で出現するアカシジアに注意

 がんの痛みの治療では、「WHO方式3段階除痛ラダー」に従って、非オピオイド(第1段階)から強オピオイド(第3段階)まで使っていき、各段階で必要に応じて鎮痛補助薬の併用を検討するのが原則です。

抗癌剤や鎮痛薬による副作用を抑える薬が処方された場合に特に注意していただきたいことがあります。先述したBさんの場合、オキシコドンによる吐き気に対してプロクロルペラジンという薬が処方されました。

この薬は一般的に制吐剤としてよく使われます。Bさんの吐き気は改善しましたが、今度はそわそわしてじっとしていられず、足がムズムズし、夜も眠れなくなりました。

ドパミン受容体拮抗薬のプロクロルペラジンにはアカシジア、パーキンソニズムといった錐体外路症状を起こす副作用があることが原因です。

Bさんにとってアカシジアは耐え難い苦痛であり、日常生活に大きな支障が出ました。アカシジアの症状には足踏みをする、うろうろするといった外的不穏と、下肢の異常感覚、不安焦燥感などの内的不穏があります。

外的不穏の症状であれば、だれの目にも留まりますが、内的不穏は見逃されやすく、Bさんもアカシジアのつらい症状が続いていました。そこで、プロクロルペラジンの投与を中止したところ、錐体外路症状は改善しました。

当センターのがん患者さん100人を対象に制吐剤による錐体外路症状の発生状況を調査しました。その結果、プロクロルペラジンを投与した患者さんの14%が服用後5日以内にアカシジアが出現していることがわかり、研究論文として報告しました。

がん患者でオピオイド導入時にプロクロルペラジンを用いた場合のアカシジア発現に関する報告がほかにあるか、国内外の研究報告を検索しましたが、見当たりませんでした。

シスプラチン投与に対するプロクロルペラジンについての報告は多くありますが、アカシジアの発現率は2.4~61.5%と大きくばらついています。このデータからも錐体外路症状が見逃されている状況が伺えます。

通常、中等度~高度の強さの痛みに対してオキシコドンやタペンタドールが用いられますが、吐き気が現われて鎮痛薬が服用できなくなることを考慮して、制吐剤が一緒に処方されることが少なくありません。

実際は、吐き気が出ない人のほうが多いようです。制吐剤は同時に服用する必要はなく、吐き気が出たら使えばいいのです。吐き気が止まれば制吐剤は中止し、漫然と服用しないよう留意しましょう。なお、オピオイドによる吐き気は服用2週間ほどで耐性ができます。

同じ抗ドパミン作用があるオランザピンはプロクロルペラジンに比べてアカシジア、パーキンソニズムの副作用は軽減されていますが、不快な症状が現れたら主治医に相談することが大切です。特に内的不穏の症状は患者さんが訴えない限り見逃される可能性があります。

また、認知症のがん患者さんの場合は痛みの評価がむずかしく、よく相談を受けます。動きが少なくなる、顔をしかめる、食事をとらなくなる――こうした患者さんの表情、しぐさ、行動など、非言語的なメッセージを家族が読み取って、その情報をもとに医療側の専門スタッフと一緒に評価する必要があります。

痛みの治療は患者さんと医療者の二人三脚で

 dr_yomiyaがんの痛みの治療は患者さんと医療者が二人三脚で取り組むことが重要です。そのためには、患者さんの協力が欠かせません。たとえば、8項目の痛みの情報をまとめたメモを初診時に渡してもらえれば、医師はとても助かります。

NRSのスケールで自分の痛みを数字で伝えることはなかなか難しいことだと思いますが、たとえば「6」の痛みを「2」にしてほしいことがわかれば、医師も薬の調整をしやすくなります。せめて痛みを「少し取ってほしい」「かなり取ってほしい」ということがわかるだけでも問題解決の足掛かりになります。

がんはつらいもので、それから目を背けることは残念ながらできません。しかし、緩和ケアに使われる鎮痛薬の種類は増え、さまざまな痛みに対処することができるようになりました。痛みを上手に伝え適切な治療を受けることでそのつらさは和らぎます。

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