本田 宏著『誰が日本の医療を殺すのか』

この本は、済生会栗橋病院の副院長先生である本田 宏医師が、医療現場の窮状やその原因そして対策など、確かなデータに基づいて、医療最前線の医師が、一刀両断・直球で斬り込んでいる、ある種恐れを知らない稀有な本であるとも思う。

医療費の抑制とはどういうことか、患者の思い込みや勘違い、厚労省の問題のすり替えなど、医療崩壊危機の原因を究明し、誰に遠慮をすることなく大胆に本質を見極めている。

その本の主旨を、上っ面の知識で発信してはいけないと自分には言い聞かせている。だから敢てそこを今は避けている。

さて、昨日の続きである。“原文まま”ではあるが、段落、行間はブログの都合上変更してあるのでご承知願いたい。
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=「土下座しろ」罵倒される勤務医=

医師と患者さんの関係がぎくしゃくしはじめていることは、現場でも顕著に感じる場面が増えてきた。2006年に、私の担当する外科病棟で次のような出来事が連続して起こったのである。

一件目は、あるがんの患者さんが、長期にわたる入院の末、息を引き取られたときのことだった。主治医がちょうど手術中だったため、私が代わりにご臨終のベッドサイドにうかがったところ、ご家族が声を荒げて、「この大事なときに、なぜ主治医が来ないのだ」と、私に詰め寄ってきた。私が、

「今、手術中で手が離せないのです」と答えると、「冗談じゃない、今すぐここに呼べ!」と大声で怒鳴りだしたのだ。私は返す言葉もなく、あぜんとしてしまった。この患者さんの治療の過程で医療事故のようなミスは一切ない。主治医とトラブルがあったわけでもない。そもそも、このご家族は、日ごろほとんど病院に顔を出していなかったという。

もう一件は、病院が休診の日曜日の出来事である。この日の午前中、やはり長期間治療を続けていたがんの患者さんの容態が悪化し、主治医はご家族に危篤状態であることを告げた。しかし、その後、小康状態が続いたため、主治医は夕方に一度帰宅した。すると、その直後に患者さんの容態が急変。すぐさま主治医に呼び出しがかけられたが、病院に到着する前に患者さんは亡くなった。

そこで当直医がご臨終の宣告をしようとすると、ご家族がそれをさえぎって、「主治医を呼べ!」と騒ぎ出した。主治医が30分遅れて到着したとき、ご家族から浴びせられた言葉は、なんと「土下座しろ」だった。

この場合も、治療上の問題は何もなかった。医師と患者さん側の関係は、むしろよかったのである。「愛憎半ばする」とよくいうが、医師に対する依存度が強ければ強いほど、少しでも自分の欲求が満たされなかった場合、一転して憎しみに変わってしまうことがある。

そこには、日本の古くからの因習である「主治医制」が深く関係しているのだが、その詳細は第6章に譲る。いずれにしても、相次いで起こったこれらの二件の出来事は、私を含めて当院の外科スタッフの心の中に、今でも大きなしこりとなって残っている。

長期にわたって一生懸命、身を粉にして治療にあたったにも関わらず、最期の場面で「土下座しろ!」と罵倒されるような環境は、あまりにも哀しすぎる。医師と患者さんがもっと余裕のある関係性を築くためにも、医療現場の改善が急務といえる。

・・・・・・・本文中より抜粋・・・・・・

身近なところで起きたこの哀しい事例を皆さんはどのように感じられたことだろう。医療現場に立つ医師側の悲哀がこだまして心が痛む。

ささ。明日は県庁に出向き、県内のがん対策推進業議会に要望書を提出する。すでに、協議会では、厚労省に提出する内容の大綱は出来上がっているようだ。21日に協議会が開催され、最終確認がされるとのこと、出遅れたけれど、自分のがん対策に関する考えを、余すところなく申し上げたいと思っている。

このような意見を聞いて頂ける機会を与えて頂いた県の担当者様には、心から感謝するものである。

  1. 2007/12/11(火) 19:52:27|
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