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(Tue)18:16

勝俣範之医師のヨミドクターコラム:がんを正しく恐れること(上)~がんは検診さえしておけばよいというのではない~

がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点

2016年6月13日

がんを正しく恐れること(上)
~がんは検診さえしておけばよいというのではない~

マスコミのがん報道の問題点

 マスコミにとっては、芸能人ががんになることは、かっこうのネタになります。がんは、怖い病気ですが、視聴者、読者の同情を誘うことができるため、視聴率を稼ぐことができるのだと思われます。

 マスコミでの芸能人のがん報道が流れるたびにいつも思うことは、正しくがんのことを報道してほしい、ということです。

 単に興味本位だけで、安易な情報を流してほしくない。また、公表した芸能人の方のプライバシーや気持ちには十分に配慮してほしいと願うものです。

 病気になったのは、本人が悪いことをしたわけではありません。それなのに、本人の自宅まで押しかけていって中継をするのは、どう考えてもおかしいと思います。

 そして、こうしたがん関連の報道の最後は、必ずといってよいほど、
 「がん検診しましょう」
 で終わることが多い。

 がん検診は、確かに大事なことなのですが、
 “がんは、検診さえしておけば、大丈夫”
 “がん検診しておけば、がんは克服できる”
 のようなメッセージは、大変誤解のあるメッセージであると思われます。

 正しくは
 “検診が有効ながんは、一部の限られたがんのみであり、検診が向かないがんもある”
 なのです。

 がん検診さえしておけばよい、というメッセージは、がんになった人に対する偏見にもつながります。

 「どうして検診しなかったの?」
 「検診しておけばよかったのに」
 と、自己管理ができなかった悪い人、というレッテル付けにもつながってしまいます。

 さらに、検診していても、がんになった人に対しては、
 “検診していても見つからなかったほど悪いがんになったかわいそうな人”になってしまいます。

 今回は、がん検診に対して、あまりに偏った情報が多いので、がん検診の有効性と害について、正しく解説してみたいと思います。

有効ながん検診は種類も年齢も限られている

 がん検診が有効ながんは、日本では、子宮 けい がん、乳がん、大腸がん、胃がん、肺がんの五つとされています=表(注1)。逆に言うと、この5つのがん以外を見つけるため、がん検診を受けることはあまりメリットがなく、勧められないということになります。

 表 検診が有効ながん

対象臓器効果のある検診方法対象者受診間隔
問診に加え、胃部エックス線または胃内視鏡検査のいずれか50歳以上2年に1回
子宮頸部問診、視診、子宮頸部の細胞診、および内診20歳以上2年に1回
乳房問診および乳房エックス線検査(マンモグラフィー)40歳以上2年に1回
質問(医師が自ら対面により行う場合は問診)、胸部エックス線検査および喀痰かくたん細胞診(ただし喀痰細胞診は、原則50歳以上で喫煙指数が600以上の方のみ。過去の喫煙者も含む)40歳以上年1回
大腸問診および便潜血検査40歳以上年1回

 この表でも、すべての年齢に対して、がん検診が勧められる、というわけではなく、一定の年齢以上としています。

 例えば、乳がん検診は、40歳以上の女性に2年に1度の推奨となっています。

 ちなみに、米国や、英国では、乳がん検診の有効性が認められる年齢を50歳から74歳までとしていて、40歳代の検診を推奨していません(注2、3)。

 この理由としては、40歳代の女性が定期的に乳房エックス線検査(マンモグラフィー)を受けることは、有効性を害が上回ってしまうというのです。
 

若年性乳がんの検診は害が有効性を上回る

 米国政府委託機関である米国予防医学専門委員会(The U.S. Preventive Services Task Force:USPSTF)は、40歳代の女性がマンモグラフィーを受けることで得られる有効性はわずかなものであること、若い女性の乳がんはマンモグラフィーに映りにくく、「陰性」なのに「陽性」と出てしまう「偽陽性」が多く、過剰な生検(組織を取って検査する方法)を受けてしまう害が多いこと、さらに、本来なら治療しなくてもよいがんを治療してしまうという過剰診断を指摘して、2009年より、マンモグラフィーの推奨年齢をそれまでの40歳以上から、50歳以上としました(注4)。

 このように国際的にも、また、日本でも、若年性(20歳代、30歳代)の乳がん検診については、推奨されていません。さらに、若年女性では、偽陽性や過剰診断に加えて、エックス線被ばくを過剰に受けることにもなりますので、検診を受けることの害は多くなります。

 日本で一部で行われている超音波(エコー)による乳がん検診はどうなのでしょうか。

 若年女性に対して、超音波検診は、マンモグラフィーより病変を発見しやすいと考えられていて、40歳代の女性を対象に、マンモグラフィー検査単独と、超音波を組み合わせた場合との大規模ランダム(無作為)化比較試験が日本で行われ、マンモグラフィーのみのがん発見率は0.32%(117人)だったのに対し、超音波の併用では0.5%(184人)に上昇したと報告されました(注5)。

 しかし、この研究結果は、まだ発見率のみのデータであり、有効性を判断する最終データである死亡率の低下は報告されていません。超音波検診群では、偽陽性例が、8.6%あり、生検を受けた人が、マンモグラフィー検査単独群と比べて、多く生検を受けた(4.5%、1.8%)ことの不利益もあることからも、まだ推奨される検診方法とは言えません。

乳がん自己触診の有効性も証明されていない

 乳がんの自己検診に関してはどうでしょうか。

 実は、医学的・科学的には、定期的な自己触診に関して、有効性は証明されていません。

 このことは、大規模な2件のランダム化比較試験の結果、示されました。むしろ定期的な自己触診の実施によって、女性たちがより頻回に病院を訪れるようになり、生検を受ける人が増加したと報告されています(注6)。

 この結果から、米国の国立がん研究所のガイドラインでも、定期的な乳がんの自己触診は推奨されていません(注7)。

 これらのことから言えることは、乳がんに関して、不必要に恐れ、過剰に対応するということでなく、検診は、適正な年齢になったら2年1度マンモグラフィーを受ければよく、また、それ以外では、乳房のしこりやくぼみなどの変化に気づいた際に、医療機関を受診すればよいというわけです。

わたしたちにできること

 芸能人の乳がんが報道された後、街角で若い女性にインタビューをし、
 「私も検診に行かなくちゃ」
 などと言わせていることは、がん検診に対して、正しい認識を広めることではなく、間違っているどころか、有害なことでもあるということをわかってもらわなければならないと思います。

 がんは、決して特別な病気ではありません。
 がんイコール死ではなく、手術や検診だけが大事というわけではありません。
 がんを持ちながらも、抗がん剤治療をしながらも、共存・共生ができるようになりました。

 2人に1人はがんになる時代、身内にも、職場にも、がんの患者さんはいらっしゃるのではないでしょうか。

 私たちにできることは、正しくがんを恐れ、正しい情報を身につけることだと思います。

 また、がんの患者さんに対しては、決して特別視することなく、温かく見守り、応援してほしいと思います。

 次回は、検診に向かないがんについてお話しします。

 参考

 1. 国立がん研究センターがん情報サービス. がん検診について.

  http://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr.html

 2. The U.S. Preventive Services Task Force (USPSTF): Breast Cancer: Screening.

  http://www.uspreventiveservicestaskforce.org/Page/Document/UpdateSummaryFinal/breast-cancer-screening  2016.

 3. Independent UKPoBCS. The benefits and harms of breast cancer screening: an independent review. Lancet. 2012;380(9855):1778-86.

 4. 2009年11月17日号(海外癌医療情報リファレンス掲載・日本語版) NCB, 「米国予防医療専門委員会(USPSTF)が乳癌検診に関する勧告を更新」.

  http://www.cancerit.jp/xoops/modules/nci_bulletin/index.php?page=article&storyid=348

 5. Ohuchi N, Suzuki A, Sobue T, Kawai M, Yamamoto S, Zheng YF, et al. Sensitivity and specificity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast cancer in the Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial (J-START): a randomised controlled trial. Lancet. 2016;387(10016):341-8.

 6. Kosters JP, Gotzsche PC. Regular self-examination or clinical examination for early detection of breast cancer. The Cochrane database of systematic reviews. 2003(2):CD003373.

 7. PDQ® – NCI’s Comprehensive Database: Breast Cancer Screening (PDQ®)-Health Professional Version.

  http://www.cancer.gov/types/breast/hp/breast-screening-pdq#link/_33_toc

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